雨の日は、世界の輪郭が曖昧になる。
霧は遠くを隠し、雨は境界を溶かしていく。
そんな景色を見たくて、昨日は少しだけ車を走らせた。
葉を打つ雨。
湿った土の匂い。
水滴をまとった緑。
時間まで、少しゆっくり呼吸しているようだった。
見えなくなるものがある。
その代わりに、晴れた日には見落としてしまうものが、静かに姿を現す。
今日は、そんな静かな一日になると思っていた。
けれど、雨の中、この場所を訪れてくださる方がいた。
一杯のコーヒーを囲む時間。
交わされる何気ない言葉。
開いては閉じる、少し重い扉の音。
気づけば、曖昧だった一日に、少しずつ輪郭が戻っていた。
夜、遠くで花火の音がした。
出先で、ふと外を見る。
ビルの隙間、雨と煙の向こうに、今年最初の花火がぼんやりと浮かんでいた。
輪郭は曖昧で、色も滲んでいて。
けれど、不思議なくらい美しかった。
「見られてよかったですね。」
その一言だけが、雨に溶けることなく、静かに残った。
雨の日は、世界の輪郭が曖昧になる。
けれど、輪郭が曖昧な日だからこそ、偶然出会える景色がある。
明日はお休みです。
また月曜日に。
