「主観的という言葉を無意識に切り離しました。その人の思い出、思い入れ…そんな曖昧なもので左右される「美味しい」…これは無駄であると。数値化できる「うま味」こそ、唯一信じられるものなのだと。」
「主観は必要だわ。数式に挑むとき…理屈や常識ばかりに囚われると凡庸な答えばかりに辿り着く。主観的な思い入れから解に結びつくことも多い…」
フェルマーの料理 1巻
うま味物質は日本人によって発見されました。
池田菊苗 グルタミン酸
小玉新太郎 イノシン酸
国中明 グアニル酸
それぞれ昆布、鰹節、干し椎茸。アスパラギン酸や、アデニル酸の塩類もうま味物質の一種。貝の味を構成するコハク酸もうま味物質です。
うま味は、甘味、酸味、塩味、苦味に続く基本味の5 番目の味です。
2002年に、「うま味」物質であるグルタミン酸と結合する「うま味受容体タンパク質」が、舌から発見されて基本味と認められました。
うま味物質には香りがないので、単独では美味しくないです。
スープや味噌汁にうま味物質を添加する場合、0.3~0.5%濃度で添加すると美味しくなります。それ以上の量のうま味物質を添加すると急激に旨さが低下します。
さてコーヒーと基本味です。
甘味 (sweetness)はショ糖、果糖、ブドウ糖などが焙煎中にカラメル化やメイラード反応を通じて甘い香りや風味成分を作り出すので複雑な甘さが感じられます。
酸味 (acidity)は有機酸(クエン酸、リンゴ酸、酢酸など)による爽やかでフルーティーな味覚を。元々果実であるコーヒーの特徴を良く表す味感ですね。
カフェイン、クロロゲン酸、メラノイジンなどに由来する味覚が苦味 (bitterness)。単純に焙煎が進むほど増加します。チョコレートやナッツの風味もやり過ぎれば焦げ臭に。
塩味 (saltiness)は豆というより水。微量のミネラル(カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム)によるもの。水の硬度はコーヒーの風味に影響を与えます。
そして旨味 (umami)です。コーヒーオイル、タンパク質(アミノ酸)、多糖類などです。アミノ酸は生豆に含まれ、メイラード反応を通じて揮発性の好気成分などを生成します。
こうした成分がコーヒーの味わいに寄与するのですが…成分てんこ盛りにしても決してうまいコーヒーにはなりません。
うま味の相乗効果は基本2種の組み合わせからですし、そもそもコーヒーにはそこまでうま味成分はないかと思います。
要するに出汁は出ません。コクや深み、質感や余韻の持続性に関連するのでしょうか。
コーヒーに「味の素」を入れても美味しくは感じません…美味しくないです。
ちなみにトマトとナスにはグアニン酸が含まれていて、熱を加えるとさらに増加します。グアニン酸は少量でグルタミン酸のうま味を増強します。
ほんの少し濃いめのコーヒーを入れると苦味がトマトの酸を押し上げてくれます。それからトマトと合わせるナスは少し焦げた?というくらいまでローストするとうまいです。
コーヒーは苦くない方が美味く、ゴーヤは苦い方が美味いです。トマトと合わせるナスは焦げ目が肝心です。完全なる主観です。
明日はお休みです。また土曜日も所要により臨時休業となります。
次の営業は日曜日。10時から16時までです。
#unit_coffee_stand