人類は滅びるにまかせるのか、と問われて、ナウシカはためらうことなく、わたしたちは腐海とともに生きてきた、滅びはすでに、暮らしの一部となっている、とこたえる。滅びも死も闇も、虚無だって、逃れようもなく、わたし自身の一部である…
赤坂憲雄 ナウシカ考
「風の谷」というある種残されたユートピアから旅立ち、「生きねば」ならない世界の悲惨に立ち会い続けるナウシカ。
赤坂は二項対立の否定という一つの結論に至ります。
生と死、現在と過去、善と悪…清浄と汚濁。
こうした図式は分かりやすいしウケるけれども、ナウシカはそういう物語ではない気がします。
ともするとエコロジカルな視点のメッセージを読み取り、今の時代の先行きの不毛さを憂えて闘うナウシカは現代文明の在り方に警鐘を鳴らすヒロインだとされるかもしれません。
でもナウシカは2項対立の図式で世界を見てはいません。決してそんな綺麗事を並べてはいません。
自身が罪を背負い引き摺りながら、それでも「生きねば」ならない世界。
「食べるも食べられるも、この世界では同じこと。森全体がひとつの生命だから」
宮崎駿 風の谷のナウシカ
清汚合わせて全て引き受けることが「生きる」こと。
宮崎駿は、村上春樹的な創作スタイル…作品のプロットを緻密に組むのではなく、物語の流れに任せるタイプの人なのかと。
原作の漫画は1982年から雑誌『アニメージュ』に連載されて、映画版を挟み94年に完結しています。
12年の歳月は作品を深く落としすぎていて、正直よく分からなくなっています。
もしよろしければ、unitの本棚には原作漫画がありますので、お目通しを。
後の作品の「もののけ姫」では、生きねばならないではなく、
「生きろ」
生きるという事に更に深化を与えているように感じます。
僕はまだしばし清濁合わせて生き続けようと思います。
明日は14時から21時まで。夜のお時間,よろしければお付き合いください。
#unit_coffee_stand