波音が聞こえた。不意に海が見たくなった。
階下に降りてサンダルをつっかけ、庭に出て眺めた。しかし眼下には闇が広がるばかりだった。
伊吹有喜 風待ちのひと
よく吠える犬、夏野菜の濃い色、スイカの匂い、吹き抜ける浜風の音、どこまでも青い空と海…夜の海の漆黒。
夏になると必ず思い出すのが、海の見える祖母の家。
祖母が家を建てたのは、塩釜港や松島、七ヶ浜まで見渡せる高台。
女手一つで浜の加工場や市場なんかで働いて、3人の子を育てあげ、高台の家まで建てました。
当時は細い階段を随分と登って行く道しかなく、車どころか自転車でも行けません。それこそジブリの世界観のような家でした。
昔は確かに感じ取っていた夏の空気感。今はただ毎日暑い暑いとゴネているだけになってしまいました。
輝くような景を見せる海も、夜に訪れると何処までも暗い、引き込まれるような純粋な黒。夜の海が怖かったのも思い出します。
海の闇には純度があり 山の闇には濃度がある
伊吹有喜 風待ちのひと
ここは海がないけれど、風もぬるいけれど、毎日を過ごす場所があって、そこでコーヒーを淹れられているので、良いのでしょう。
過ぎゆく一日。何も劇的なことはなく、それでもかけがえのない日々であることは確か。
本日も色々なお話をカウンターに立って聞かせてもらいました。明日もまた。
それからエチオピアのタミルさんのコーヒーがALO農園から届きました。明日ご紹介します。
明日は14時から21時まで。夜になってもまだ暑いのでしょうか?
#unit_coffee_stand