たゞしばし群とはなれて阿武隈の岸にきたればこほろぎなけり
宮沢賢治 歌稿〔A〕
旧日本銀行福島支店長公邸として使われていた「御倉邸」 @oguratei_official
明治32年、福島に東北初の日本銀行出張所が開設され、公邸として昭和2年に建造された純和風建築。阿武隈川を借景にしてとても良い雰囲気です。
現存する戦前の日本銀行公邸は福島と新潟(昭和8年築)の2つのみのようです。
本日はここでコーヒーを淹れさせて頂きました。雰囲気としては「珈琲」。
江戸から大正期の着物の展示と着付けの体験。この建物の雰囲気によく合う良いイベントでした。また機会があれば是非。
大正期の着物を纏い煌びやかな姿を目にしながら珈琲を給仕するのは良い時間でした。
全く詳しくはないのですが、この時代の着物の手織りの絹地とその柄はなんとも鮮やか。
着物姿で珈琲を手にして御倉邸を歩かれている姿は、なんと言うか、感じ良くて嬉しく思いました。
大正期に、宮沢賢治がこの辺りの「隈畔」に一度だけ立ち寄ったことがあるようです。
山形市で開催された「奥羽連合共進会」に向かう途中、盛岡から福島駅で途中下車し阿武隈川を詠っています。
大正5年の時点では盛岡から山形へ行くには福島を経由するルートのみだったようです。
「こほろぎ」ですから秋。10月4日のことでした。何故ひとりここに来たのでしょうか。
宮沢賢治の懊悩する様がそこにはあったような気がします。
半ば以上は初恋の情熱のせいでもあると、ひとまず言っておきたい…
そこでは美も醜も、観念も、実態も、そして虚も実も区別なく描くということになる。
池川敬司 宮沢賢治の初恋と短歌 一 不可解な歌をめぐって 一 國文學91 2007年3月 関西大学国文学会
水銀のあぶくま河にこのひたひぬらさんとしてひとり来りぬ
宮沢賢治 歌稿〔A〕
「ひたひぬらさん」とした宮沢賢治の懊悩は20歳ならではの恋愛に関するものだったかもしれませんが、ただ漠然とした情景は詠んでいません。
流石に僕はそう言う懊悩はないですが、こうした景の良い場所で、ゆるりと焙煎と抽出が出来る環境を手に入れられるのはいつ頃になるかと、しばし眺めつつ思いました。
明日は飯坂平野。福島テレビ ハウジングプラザ @ftv_housingplaza にて、「コーヒーの香り」をお届けします。
お時間あれば是非。
#unit_coffee_stand